杜から森へ

樹を植えよう!とはいっても、お金も掛かれば手間も掛かる。じゃあ何故植えるのか?
その意味=「その得」を考えたいと思います。

一戸の住宅をイメージします。そこに植栽計画を施します。
多くの住宅に見られるパターンとして南側リビング、水周り北側集中の家として考えますと
まず欲しいのは南側の日除けになる大きな樹です。夏の日射、また隣地建物からの輻射熱を
遮ってくれるある程度の高木が望ましいですね。
同時に冬場の貴重な日差しを取り入れないといけませんので、その時期は葉っぱを落としてくれる
落葉樹がベストです。ただここ福岡では夏の日差しが強く、多くの落葉樹が葉焼けをおこしますので
同じ高さ以上の常緑樹も植えたほうがベターです。

さあこれで南側の一部に木陰が出来ました。十分ですか?
夏の太陽高度を考えるとリビングから距離のある樹の木陰では不十分です。
建物屋根庇が長く出ていて真上からの太陽を遮ってくれればいいのですが
冬の日射取り込みを考慮すると限界があります。
で、私の場合取り外し式のターフを付けています。
実際、5月を過ぎるとこれがないと日中座ってられません。
またデッキやタイルテラスは陰になって輻射熱の発生を抑えられますので
家内の温度が全く違ってきます。簡単なことですが、新築の際に是非それようの
フックを取り付けることをお奨めします。

これで南側の対処は出来ました。次に北側です。
都心部の場合、現状その確保は難しいのですが理想は常緑高木です。
海岸線や昔の集落には必ず防風林というものがありますね。
一住宅においても同じで冬場の北風を防いでくれます。
(地形によって吹く風の方向は違いますんで一概には言えませんが)
そして夏場は、空調装置としての役割を担ってくれます。
公園などの木陰で感じるそよ風は上昇気流と下降気流によって引き起こされる
風の流れです。少し難しいですが説明しますと、
樹木は根から水を吸って葉っぱから蒸散させています。蒸散によって発生した水蒸気
は上昇して雲となります。これが樹の南側でつくられる上昇気流です。
上昇気流が発生するとそれを補う下降気流が誘発されて、北側日陰の気温が低い部分に
生まれます。地上付近まで降りてきた下降気流は日向側に引き寄せられます。
こうした空気の循環が樹木のもとでの風の流れとなります。
つまり北側に樹木を植えることで天然の空調装置を備えることになります。
後は建築の設計段階で如何にそれをとりいれるかを考えれば良いですね。
(南北通風、防犯上の仕様、気密断熱、建築材料、等色々ありますが専門ではないので省きます)

ただ悲しいかな実際は都心部では北側敷地においてはほぼ植栽スペースはありません。
最初から土間が打ってあったり、無くても通路幅1mぐらいであって、配管が多く集中する場所に
根を張る高木なんかを植えられないのが現状です。浴槽も多くは北側にあり、目隠しを兼ねた高木を
植えられればいいのですが上記理由で厳しいです。解決策として常緑つる物を面状に高さを出すという風に
していますが・・・
思うに南敷地を狭くしてでも北側スペースを確保すべきだと思っています。
北側の風景もいいものですよ〜。南と違って反射光ですから明りは一定で落ち着きますし
第一、樹木は全部南側向いてます。つまり正面を見るには北側に植えないといけないんですよね。

こうやって一戸の住宅の南北東西に杜が出来て(建築的工夫もして)風の循環が出来れば
隣家が同じように南北に植栽をすることによって風の循環する領域が広がります。
(その際、コンクリートCBなどの風を遮断する塀よりも、通風ブロックや生垣などのほうが効果は上がります。
南欧の外構に通風ブロック、レンガが使われてるのはデザインだけでなく理にかなってるわけです)
一戸の住宅から二戸、三戸、十戸と広がっていけばそれは連続した林となり森となります。
そうなれば当然個人が受けるメリット=植栽環境から受ける得は大きくなりますよね。
同時にそれを維持するランニングコストも頭数で割れば負担が少なくて済みますし。

どうです?こうやって意味を知ると既存の樹木が大切に思えてくるでしょう?(^^)
旧家の樹木が撤去されてつまらないアパートが建っていく現実を見ると腹立ってきません?
結局は施主さん個人、及び設計、ビルダーの皆さんの理解と実施がなければ進まない話ですが
何とか財産である緑を残して、かつ経済的にも(Benefitの意味で)無理なくいける方法を作っていくことが
この地上での快適ライフの近道だと思うんですよね。
実際上記をやられてるところもあって、↓
参照参考:「まちに森をつくって住む」甲斐徹郎・チームネット
こういう動きが多く広まると環境共生という理想論でなく、もっと現実的に、
個人が享受する得=社会のニーズ=企業が乗りだす(ビジネスとして成り立つ)=環境保全、改善
という良いサイクルが生まれてくるわけです。当然私だって仕事の機会増えますし〜(^^)/
皆さんもっと樹を植えましょうよ!安藤さんみたいに建物毎地下に潜らずとも(^^)
今この段階で出来ることはあるんですよ〜!一緒にやりましょ!

















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