目指す物は“粋”

 

商業芸術の世界において物を創るということはいたってシンプルな事だと思います。
お客様が欲しいと思う物。自分が創りたいと思う物。
それが合致した時にコミュニケーションが生まれ、頭の中にあった空想が画となり現実の形となります。

職人として身を立てていこうと決心し、厳しい修行をしてまでも得、
具現化したいと願うその先には理想の空間があります。
その空間は人それぞれ違いますが、自分の生い立ち、人生の中で、
そこでの体験や経験が忘れ得ぬものとして残り、
自分も再現したいと思う気持ちが創作欲として少なからずあります。

私の目指す物は・・・“粋”です。粋な空間。
日本人が本来持ちうる美学と、千利休の時代から脈々と流れる数寄屋の精神。
日本人の遺伝子の中に脈々と流れる美学です。
歌舞伎や能、長唄といった古典芸能を理解する上では必然の様式美でもあります。


実はそのような思いを持ちながらも、下請けとして不本意な仕事をすることもありました。
建築の分野は次々に新商品が開発され、流行としてもてはやされます。
もちろん良い品もありますが、中には施工の簡易性だけを追及し、
とってつけたようなデザインだけで消費者をごまかしているような品もあります。
そこには我々が長年培ってきた技術や知恵を軽視するような風潮もあります。

 

何とかこの状況から脱却できないかと、試行錯誤と多少の勇気を胸に、
一切の下請け工事をお断りする事にしました。
正直、経済的に苦しい時期があったこともありますが、
自分の中の矛盾から開放された喜びと、
初心に戻った自分自身に対しての対価の方が大きかったような気がします。


お手軽な偽物が溢れるこの時代こそ、手間と知恵を惜しまずに本物を創っていきたいと思いますし、
またそれを伝えていく義務があると思っています。

 

多少生意気かとお思いでしょうが、これが私の本心です。




 

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